【水木しげる漫画大全集第2期 刊行にあたって編集部からのメッセージ】 20150203
先日、大水木しげる先生と会食させていただく機会に恵まれ、先生は開口一番、「本は、売れていますか」とお尋ねになりました。水木しげる漫画大全集が売れているか、ということではなく、いま、世の中の、出版物すべての売れ行きについて、気にされておられるのです。漫画描きは、ニセモノが多く混じってる、とも仰いました。絵が駄目ですか、と訊きますと、いや、絵はよくても、お話がよう書けません、そういうのはニセモノです、だいたい漫画描きのなかにはそうしたニセモノが八割は混じっとる、とのこと。水木サンは絵もストーリーもできるから、ここまでやって来られたんだなぁ、と仰せでした。ペン一本で一代をなした齢九十余年の現役作家ならではの自画自賛、と感服いたしました。
さて、水木しげる漫画大全集編集委員会のみなさんは、あまた描かれた水木作品についての知識と含蓄について、エキスパートであり、スペシャリストです。全集というからには、これまでに発表された水木漫画をすべて収録せんと情報を集めています。監修者の京極夏彦先生ですら見たことのなかった、これこれという冊子に掲載されていると水木者(「みずきもの」 ※水木作品マニアのことです)のなかで噂されていたしかじかという作品、が、ほんとうに発掘されたりしています。京極先生から「この作品を生きて読める日が来るとは。町内をスキップで走り回るくらい嬉しい。」とのお言葉が出るほど、単行本初収録作品を惜しげもなく大量収録しています。全集ですから、なかには、掲載当時、ちょっとこの作品は他の水木漫画よりテイストが落ちるな、と編集委員がかんじたものもあります。でも今回改めて、発表から時間が経って全集収録のために読み直すと、面白い。深い。京極先生は、この作品いまいちだったよなー、という編集委員に対して、「そんなことはないです。改めて読んで、わたしは泣きましたよ。」「水木漫画に外れなし。」「読んで忘れて、また読んで。」「21世紀の幸福を買え!」と檄を飛ばされております。そんな水木愛に満ちた「水木原理主義者」たちが、「自分たちじゃなく他の人がこの全集作ってくれて、毎月届いてただ読むだけだったらどれだけ幸せか……」と日々ボヤきながら、しかし妥協を許さず制作している水木しげる漫画大全集は、とてもとてもシアワセな出版物だなぁと思います。このシアワセな水木全集を、「水木者」だけではなく、「水木主義者予備軍」の読者様のお手許にも届けばいいなぁと願っております。第2期35巻をご覧になったご意見ご感想をぜひ編集部までお寄せください!
講談社コミッククリエイト
水木しげる漫画大全集編集部
内山幸三