水木しげる漫画大全集をお読みいたただいているみなさまへ 2015/12/03
水木しげる漫画大全集をお読みいたただいているみなさまへ
平成二十七年十一月三十日、『水木しげる漫画大全集』の
著者・水木しげる先生が永眠されました。享年九十三でした。
水木先生は同月十一日の朝、自宅で転倒され、頭部打撲に
よる硬膜下血腫で緊急手術を受けられました。一時は回復の
兆しが見られたのですが、三十日未明に容態が急変、帰らぬ
人となってしまったのです。
多臓器不全、朝七時十八分のことでした。
おりしも十一日は茂鐵新報のためのインタビューをお願い
していた日でもありました。取材は延期となり、我々編集委
員会をはじめ、全集刊行に携わる全員が先生の容体を案じて
おりましたが、快方に向かっているとの報せを受け、次回イ
ンタビューの日取りを決めなければと考えていた矢先の、突
然の悲報でした。速報が流れたとき、読者の皆さんはさぞや
驚かされたことと思います。全集刊行に携わる我々も、まっ
たく同じ気持ちでした。
最近の水木先生は、さすがに足腰の衰えこそ隠せませんで
したが、それでもインタビューのときにはお土産の大福餠を
ペロリと平らげられ、愉快な発言で周りを大笑いさせるなど、
大いに元気なご様子でした。常にサービス精神を忘れないそ
の姿勢に、我々は笑いながらもますます畏敬の念を強めたも
のでした。
本当に、本当に残念です。
我々は、水木先生からたくさんのことを学ばせてもらいま
した。
妖怪やあの世といった、目に見えない世界のこと。仕事の
こと。戦争のこと。人の幸せとは何かということ。また、膨
大な数にのぼる漫画作品、エッセイ、そして先生の言動その
ものからも、多くの楽しみを与えてもらいました。
先生はもう現世にはいらっしゃいませんが、水木作品は未
来永劫不変です。その素晴らしい業績を永く後世に伝えるた
めにも、我々編集委員会は本全集を完結させなくてはなりま
せん。あちら側の先生に喜んでいただくためにも、より一層、
身を引き締める思いで編集作業に励むつもりでおります。
日本を代表する偉大な漫画家であり、妖怪文化の大成者で
もあった水木しげる先生。我々に様々なことを教え、楽しま
せてくれたことに深く感謝するとともに、心より冥福をお祈
り申し上げます。
水木先生、どうもありがとうございました。
水木しげる漫画大全集 編集委員会一同
(京極夏彦 村上健司 梅沢一孔 坂野公一 節丸朝子)