講談社 × pixiv まんがスカウトFes

5誌編集長が赤裸々に語る!? 最終選考レポート

応募総数1200本! 喜びの悲鳴とともに開幕!
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今回、なかよし・シリウス・デザート・ARIA・ITANの講談社5誌の初の試みということで行った講談社×pixivまんがスカウトFesですが、なんと応募総数1200本! グランプリは雑誌本誌で掲載&デビュー、そして各雑誌チャンピオンはpixivコミック上で掲載&デビューという異例の新人賞ですが、気になる作品発表からいきましょうか。それでは各編集長から、ベスト3候補をあげていってもらえますか。
中里
部署として、「なかよしでこの作品をチャレンジしてみたいな」という作品は『斉田さん疑う』でした。
山本
あの作品、なかよしで「アリ」なんですか!
中里
アリアリアリ(笑)。なかよしが進化していった先にあるデジタルというひとつの間口にこの作品があると、なかよしが肉厚になるなあという感じがしました。この叙情性をあえてデジタルで味わいたいというか。

そしてもう1本、鉄板でしっかりしているという意味で即戦力となる効果を期待というのが『神無月に咲く』。安定感もあり、見せる力も固い。絵もとてもやわらかくしっかりしているし……。

山本
画面の見せ方うまいですね。この人はなかなか描ける。
中里
しかも破綻なく。『神無月』はなかよし部員から「死んでも獲得してきてくださいよ!」って(笑)。
山本
そんな密命が(笑)!
中里
あと「『アヤとアメ』も獲得してきてください」って。
土屋
あ~獣耳のね、あれは可愛かった。
岩間
かぶるなぁ……。
中里
ベスト3はこの3本です。でもあと1本、「『今日の日はさようなら』、分かってますよね?」ってまた密命が(笑)。
土屋
今回、満票の作品ですよね。美しい女の子だけの世界だもんね、いいですね。
中里
『今日の日~』は取り合いになるだろうから、ベスト3としてはなかよしからは『斉田さん』『神無月』『アヤとアメ』です。
山本
じゃあ次、シリウスですね。まず『小さな革命家』を一押しで。うちが目指している世界観を描けつつ少年誌的な熱さもありつつ、タッチが繊細ってところで評価ですね。著者の見せたい風景がちゃんとあり、構成もうまい。非常に総合点が高いです。アクションをこういう背景込みで描ける人って、今意外にいないんですよ。特にイラスト出身の方って、人物はすごく上手に描けるんだけど世界観込みで漫画にできるって人はなかなかいない。この方、どこかでデビューしているんじゃないのっていう懸念もあるくらいなんですけどいいなと思って挙げました。

あとは『タイプライターのリボン』。ルンバと話すお話ですね。抜群に絵がうまいってわけじゃないんですけど、衒学的というか蘊蓄的な、哲学的なことを漫画に落としこみつつ絵で萌えられるというラインの作家はなかなか貴重だし、ちゃんと萌えあり笑いありっていうのを実現してるなっていう感じがしています。結構なボリュームを描いてるっていうのも評価。会って話がしてみたい人ですね。ギャグをしっかりとギャグとして描ける人っていうのはバランス感覚がいい方だと思うんですよ。これは編集長権限で推しました。

あともう一作はうちも『斉田さん疑う』なんです。ただ……どちらかというと『アフタヌーン』か、他社さんだと『フェローズ』とか、そういう雑誌ラインのタッチだよなぁという気がするくらい手慣れてる。この人多分アニメーターなんじゃないかな? アニメーターの描く絵に近いですよね。だから独特のタッチで今一番ウケそうでもあるけど、狙ってる抒情の線が割と年齢層上めかなという気もします。いい作品ですけどシリウスにドンピシャかというと、不安なところもある。……でもやっぱりいいですよね、これ。

というわけで今のところベスト3は『小さな革命家』と『タイプライター』と『斉田さん疑う』です。

土屋
『デザート』ではトップは『アネモネ』にしようと思います。花屋で女性に買われたアネモネの花(♂)の擬人化の話ですね。彼が切なく、報われない恋をする所に惹かれたのと、この方絵が非常にいいなと思ったのでこれをトップに挙げたいなと思います。

あともう1本は『キツネの嫁入り』。うちの漫画賞ではまず最終選考に出てこないような不思議な世界観の狐と少女の恋物語なんですけど、せっかくこうやってpixivさんと一緒に座組みをつくって参加した賞なので、「それならではの作品!」と一押しにしようかと思いました。でも最後の方が下絵状態というのもあって、これは二番目。

最後は僕の好みで、皆さんと一緒なんですけど『神無月に咲く』。これはかなり完成度が高い。こういう幽霊が見えるって話は他にも何本かあったんだけど、物語の世界が優しく、主人公も彼のキャラクターも良く絵的にもとっても可愛いなと。ただ掲載を考えた時に63ページっていうのはちょっと長いのが難点ですが、僕自身はとても好きな作品です。

この3本がデザートのベスト3ですが、「これはすごいんじゃないか」って意見が出たのは『鳥姫』。「この作者すげえな!」と盛り上がりました(笑)。美しいイラストと世界観で魅せられる人。実はうちトップが二転三転して(笑)、「『鳥姫』が一押しだ!」っていう部員もいてですね。

山本
海外アニメにありそうな感じのアートですよね。色使いもそうだし、バンドデシネにちょっと近い印象がありますよね。
中里
イギリスとかフランスとかでありそうな画風ですね。
岸本
ARIAの一押しは『B子さんと本の虫』。ARIAっぽい作風かな、と。最初の出だしが「幼なじみがビッチです」で『コレどうかな?』と思ったけど、百合っぽく見せてきっちりラストまで友情が描けているって所を評価です。

2位は『北斎先生!!』。これは編集長権限で(笑)! 初めは部員に「皆、ちゃんと読まないとこれをARIA賞にしちゃうよ!」って扉絵を見せながら言ったんですけど(笑)、半分以上の部員が面白いって言ってくれた作品です。ARIAの創刊時のときのキャッチコピーが「良質な奇想天外」。これはまさに奇想天外な感じがしてですね、少女漫画誌でこれを載せられるのはうちくらいかな、という気がして第2位となりました。

3位は『抱きしめちゃいけない』です。『今日の日はさようなら』とどっちがベスト3かなと迷ったんですが……あこがれのB級アイドルが田舎にやってきたという少年の心情が『抱きしめちゃいけない』はうまく描けてるとこがあって、部員の評価も高かったです。

土屋
いい話だよね。青春ものとしての良さがある。
山本
地方の叙情感を出すのがうまい方多いですよね。
土屋
『今日の日はさようなら』もそんな感じの作風ですね。島が舞台でしたっけ。
中里
短いページ数で、みんなうまく雰囲気を出してる。最近は漫画力が確実に上がってるんだなぁっていう感じがしました。
山本
『今日の日はさようなら』は、いい一瞬を切り取るのがすごく上手い方ですよね~。
岩間
じゃぁ次、ITANですね。まず『君が水になった』。これは担当になりたいという人間がうちにいまして、その編集は枯れ専なんですが(笑)、「渋い男が大人の女性漫画誌には必要だ」っていう観点なんですね。この作品がITANっぽいかっていうとまた違うのかもしれないですけど、非常に読ませる作品で物語としての体裁がしっかりしてたので、この人はもしかしたら担当がしっかりつけばかなりいけるのでは、という感じがします。最後の盛り上がりもしっかり描けてるし、とにかくどんな人か会ってみたいっていうのが一番ですね。
山本
プロじゃないのかなぁってくらいしっかりした物語でしたよね。
岩間
どんな人なんだろう……。あとはITANらしくない観点で選びたかったっていうのもあって、ほかと重複しますけど『今日の日はさようなら』。ショートフィルムじゃないけれど、走ってくる足音とか海の波音とか、音が聞こえてくるような描き方をしていて臨場感がすごくありました。ストーリーライン自体はあまり大きいものじゃないけれど、描写がうまく非常に引き込まれる。「いいもの見させてもらったな」っていう感じがする。もしかしたら島を舞台にしか描けない人なのかもしれないですけど(笑)、だったら島の漫画をずっと描いてもらいたいくらい。適度な田舎感がすごく心地よかったですね。だからこそ島を舞台に描くドラマというかエピソードもよかったんだと思います。
山本
女の子が可愛いですしね。
土屋
可愛い。女の子をすごく素敵に描ける人でしたね。
岩間
この人の描写力は頭ひとつ抜けてるって評価ですね。あとはそういう流れなんですが、1本ぐらい自分の好きなの選びたいなっていうのがあって『鳥姫』を。ただ若干不安材料がありまして……この方3作品応募されてますが、『鳥姫』が一番よくて、もう一つは全編カラーの『キリンちゃん劇場』。これも確かにぱっと見た目は上手いんですけど、読んで心に残るかっていうとそれはわからない。ちゃんと台詞が入った『鳥姫』の方がドラマになってるかなって思います。異形の書き方も可愛いなって思ったし、発想力があるし、いわゆる人物とかを小奇麗にまとめて描くというよりは、違和感とかそういうものをしっかりと描けるのかなっていうのがありました。ITANらしい作品という感じですかね。ちょっと一回話してみたい人ではありました。ベスト3はそんな感じですね。