グランプリの決め手は「漫画力」!?
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それでは続いて、最終的に編集長の皆さんが一致で「これ一番だよね」っていう1本を決めて頂きます。その作品をもぎとった編集部が、雑誌で掲載。あとは各雑誌チャンピオンを決めて、そちらはpixivコミック上で掲載となっております。
中里
大賞を先に決めた方がいいのかな。
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とすると、今あげてもらったベスト3の中からどれか1本出す感じですか。でもベスト3は皆さんご自身の雑誌とのマッチングで挙げてらっしゃいますよね。
岩間
まぁどうしてもそういう目線で選んじゃうよね。
中里
好みの問題とはまた違うよね……でも大賞チェックする人は絶対多いだろうし、たぶん次回もしまたスカウトFesをやるとしたら、「これを選ぶのか」っていう……。
山本
指針になるっていうことですよね。
中里
そう。やっぱり見た人にも驚きというか、pixivコミックで無料でこんなのがあったのか──!っていうのが欲しいよね。
山本
そういう意味では、「うちでも載せたい」っていう声が多い作品がいいんですかね。たとえば僕は『今日の日はさようなら』って、うちでも載せたいなって思いましたよ、さっき挙げなかったけどね。基礎得票数はこの作品が一番多いですよね。
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『今日の日』と『神無月』はどの編集部も欲しがっていますね。
山本
『神無月』、うちもありだと思いますよ。
中里
個人的な感想で言うと『神無月』は本当完成度が高い。あそこまできちんと完成しているのはすごい漫画の地力だなあと。だけどちょっとまとまりすぎてるのかな? という。
岸本
『神無月』って質は高いけど普通の新人漫画賞で賞をあげる正統な作品っていう感じ。はじめてpixivさんと組んだ今回、あえてこの賞をあげるイメージでもないのかなって思います。
土屋
驚きがないかもしれないですね。
中里
いかにも「はい、講談社やっぱりこれ選びましたね~」みたいな(笑)。
山本
大安定が一番いいんだ~、みたいな(笑)。pixivで賞を構えるということの意味からは、ちょっと遠いっていう感じはありますよね。
中里
『北斎先生!!』とか選んだ方が逆に(笑)
山本
それはある種構えすぎな(笑)
岩間
ギャグ漫画大賞になる気がしますよね。
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得票数が多いものとなると、全編集部が欲しがっている『今日の日はさようなら』、『神無月』。あとは、一編集部抜かして四編集部が手を挙げているのが『君が水になった』、『アヤとアメ』『斉田さん疑う』『B子さんと本の虫』です。
山本
今回5誌に収まりきらない才能が集まったことは確かですよね。今回の応募作で、両極を作るとすると、安定の『神無月』と異彩の『鳥姫』があって、この2作間に他の作品群があるという感じですかね(笑)。
中里
先端群から選ぶと『今日の日はさようなら』とかはいいのでは?
岩間
5誌が取り合って決まったって感じはしますよね。
中里
ページも短くて載せやすい。
山本
岩井俊二が撮ったショートフィルムのような美しさもあり。
一同
うんうん。
岩間
『今日の日』はうちの編集部の中でも担当は複数が手を上げています。どの編集部もそうかもしれないですけれど。
山本
多作にはならない人な気がしますけれどね。
中里
長いものを処理できるのかはまだちょっとわからないですね。これ16Pでしたっけ。
山本
骨太なストーリーの中に……って感じじゃまったくない人ですね。
土屋
叙情性はいいですよね。
岩間
単行本にするイメージはすごく湧きます。こういうシリーズで一回読みたいな。
中里
「島デイズ」みたいなね。
岩間
(売り方が)見えるんですよね……。
中里
好きな人は確実にいる世界だなって感じがします。
山本
去年の『桐島、部活やめるってよ』じゃないけど、卒業の日のそれぞれの子たちを切りとった、なんていうシリーズは全然出来る。それで一冊仕立てられるっていうのは強いですよね。
中里
『今日の日はさようなら』ってpixivでどれだけ評価受けてるんでしたっけ?
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総合点3991、閲覧数が7354です。ちなみに先ほどベスト3に挙げられた中で一番ブックマークされてるのは『アヤとアメ』です。閲覧数17800、総合点12000。
土屋
やっぱり絵が可愛いから……。
中里
そうすると、今の時点で得点をあんまり取ってない人にあげた方が楽しいような(笑)。こちらも発掘感がある。
岩間
『斉田さん』の人はID見るにわりと最近pixivに投稿はじめた人ですかね。この人捨てがたいんですよね。
中里
『斉田さん』は本当にいいよ~。鉛筆で描いてスキャンで取り込んで、それをデジタル処理で仕上げてるんだと思う。
岩間
あとがきを見るに3月11日に書き上げてますから、わりと最近の作品ですね。
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ちなみにpixivの中での評価点のランキングは、今回最終選考に残ってるものだと『はじまりの夜行列車』がトップで、『枕もとのきのう』が次点です。百合の。
岩間
『枕もと』だけだと少し物足りないんですが、もう1本はもっと短い。
土屋
とてもいい絵を描きますし、WEBならではのコマ割りの表現をされてますよね。なかなか印象的で。
中里
絵がすごくいいですよね。
土屋
この人男描いてもうまそうな気がする。
中里
もう1本の方も、男がすごく格好いい。
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次が、さっき話に出た『アヤとアメ』ですね。その次が『キリンちゃん劇場』。で、驚くことに次はなんと『海端会議』という。
土屋
俺ね、あれ大好き(笑)。「海はいい」って。
岩間
うちの編集部では半分票集めてるんで、個人的には大好きですけど。
土屋
うちでは掲載無理だから、ITANで頼むよ(笑)。前引きとか入ってて凝ってるよね。
岩間
作者が編集の仕事自分で全部やってくれてる(笑)。
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『海端会議』が5位で、6位がさっきシリウスが手を挙げた『小さな革命家』。その次が『君が水になった』、続いて『今日の日はさようなら』ですね。
岩間
pixiv上の数字は高くないんですけど、『ガリ勉王子と寡黙姫』っていう作品もうちでは人気でした。この人は担当がつくとまだまだいけるんじゃないか。
土屋
あとは自分がいいと思いつつ雑誌との相性を考えるとためらわれるのが『この状況で弟ルートが無いのはおかしい!』。「どこかお願い拾って!」って思う(笑)。
山本
ジャンルとしては完全にうちなんですけど、うちすぎて逆に選べない(笑)。選ぶ以上ちょっと意外性が欲しいじゃないですか。「ど真ん中を受け止めました!」って感じよりは。
中里
違うものがほしいから今回この賞をやってるんですよね。
山本
そうそう。本当に「わかってらっしゃる」方なんですよ。実際、この男の娘可愛いですからね。これで可愛くなければ目も当てられないですけど、ちゃんと可愛い(笑)。でも今男の娘市場って定着したと見るべきなのか、山を越えたと見るべきなのか、僕もまだわからないんですよ。
岸本
飽和状態といえば、そうかもしれない。
山本
だから至るところに男の娘作品はあるけど、これはツボを間違いなく抑えた作品。
岩間
僕はこの『意地悪な人』ってもっと他部署でも評価高いと思ったんですけど。若干BL風味でキャラクター力あるなぁと思って。
山本
画面構成もすごい凝ってますよね。花びらの散らせ方とか。ただ、連載とかうちで載せるということを考えると、長編描けるかなぁ……っていう心配はあるんですよね。
岩間
この人何が描けるのかなっていうのに興味あって、うちの女性陣からはわりと票を集めているんです。
中里
これって大賞は紙で雑誌に載せるって約束なんですよね。『斉田さん疑う』は本当にいい作品だけど、紙に載せるかっていうと悩ましい、うちとしては。
山本
本誌に載ったら読者びっくりするでしょうね。付録の「スーパー 最強まんが家セット」が出たときよりびっくり(笑)。
中里
まんが家セットの「漫画家ブック」の巻末に、「新しい漫画はいろいろな表現がうまれているよ」みたいな感じで載せるとか(笑)。
山本
四季賞ポータブルみたいな感じで載せるなら、いいかもですね。
岩間
小冊子もありですよね。『斉田さん』いい味してますよね、本当にね。うちでもほしい。
山本
お、いよいよ編集長同士の掴み合いがはじまりますか(笑)。
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そうするとグランプリは『今日の日はさようなら』『斉田さん』のどっちかをまず決めて、そのあとどこの雑誌が獲るかを決めるという流れでいきましょうか。
岸本
『今日の日はさようなら』じゃないですかね。
中里
ジャンルや画力で票を取ったっていうのではなく……。
山本
純粋に「漫画力」で、『今日の日はさようなら』ですかね。じゃああとはどこに載せるか決めましょうか。
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最初にベスト3に挙げた編集部はITANとなかよしですが、なかよしが『斉田さん』押しなのでそうなるとグランプリはITANで『今日の日はさようなら』ですかね。
一同
おめでとうございます!(拍手)
岩間
掴み合いはいいんですか! 本当ですか!
土屋
全編集部がいいっていう作品だから、なんかこう達成感があるね。
中里
すべての部署の争いを制したのはITANだった!