漫画らしいぶっ飛んだ展開があるのに、
妙にリアリティが有る凄い作品
おおつねまさふみ エージェント(Enlightened)・ネットウォッチャー

おおつねまさふみ

エージェント(Enlightened)・ネットウォッチャー

私はネットウォッチと呼ばれる行為を日々行っています。これはつまり「ネット」を「ウォッチ」するという、世間では「ヲタク」扱いされている特殊趣味にあたります。例えば、ネットでは主に質問箱サイトやQ&Aや匿名掲示板などで、いわゆる「釣り」と呼ばれる偽の体験談がまことしやかに書かれています。やれ、夫がひどい暴言を嫁である自分にかけてきたので、反撃として暴言を録音して、たまたま弁護士をしていた親戚に送りつけた……だの、やれ電車でガラの悪いサラリーマン風の若者が駅員にひどい態度を取っていたが、たまたま車内に居合わせた老人が偶然にもその若者が勤める会社の役員だった……だの。
そのような妙に都合の良い偶然と、必ず悪者が最後にはギ

私はネットウォッチと呼ばれる行為を日々行っています。これはつまり「ネット」を「ウォッチ」するという、世間では「ヲタク」扱いされている特殊趣味にあたります。例えば、ネットでは主に質問箱サイトやQ&Aや匿名掲示板などで、いわゆる「釣り」と呼ばれる偽の体験談がまことしやかに書かれています。やれ、夫がひどい暴言を嫁である自分にかけてきたので、反撃として暴言を録音して、たまたま弁護士をしていた親戚に送りつけた……だの、やれ電車でガラの悪いサラリーマン風の若者が駅員にひどい態度を取っていたが、たまたま車内に居合わせた老人が偶然にもその若者が勤める会社の役員だった……だの。

そのような妙に都合の良い偶然と、必ず悪者が最後にはギャフンとなる酷い目にあい、読者が読んでいて気分が晴れるような予定調和があふれた体験談が数多くネットに書かれています。

ネットウォッチャーは長年、そのような体験談をウォッチしつづけると、人物像や話の展開の都合の良さを分析して、なにが釣りでどれがガチと呼ばれる実話なのかを区別できるようになっていきます。偽の体験談を書く人をネットでは「釣り師」と呼びますが、彼らの仕掛けた釣りにまんまとハマらないように、その真贋を見分ける力を鍛えるようにしているのです。

そんな私ですが。海月姫という漫画を読んだ時には、そのあまりにもぶっ飛んでいる展開と極端なキャラクター像に、いつものネットウォッチの癖で「この住人の性格描写は大げさすぎるよなー」とか「お金持ちの設定が強引すぎないか?」など、真贋を判定する視点で読み進めてしまいました。フィクションの漫画なのに。

一見、天水館の尼ーズたちの極端な設定や、大げさなギャグで荒唐無稽な作品だと思い込んでしまいがちなのだが、実は細部のオタクネタや、設定の合理性などは 非常にリアリティを重視して描かれている。

ャフンとなる酷い目にあい、読者が読んでいて気分が晴れるような予定調和があふれた体験談が数多くネットに書かれています。

ネットウォッチャーは長年、そのような体験談をウォッチしつづけると、人物像や話の展開の都合の良さを分析して、なにが釣りでどれがガチと呼ばれる実話なのかを区別できるようになっていきます。偽の体験談を書く人をネットでは「釣り師」と呼びますが、彼らの仕掛けた釣りにまんまとハマらないように、その真贋を見分ける力を鍛えるようにしているのです。

そんな私ですが。海月姫という漫画を読んだ時には、そのあまりにもぶっ飛んでいる展開と極端なキャラクター像に、いつものネットウォッチの癖で「この住人の性格描写は大げさすぎるよなー」とか「お金持ちの設定が強引すぎないか?」など、真贋を判定する視点で読み進めてしまいました。フィクションの漫画なのに。

一見、天水館の尼ーズたちの極端な設定や、大げさなギャグで荒唐無稽な作品だと思い込んでしまいがちなのだが、実は細部のオタクネタや、設定の合理性などは 非常にリアリティを重視して描かれている。読んでいて「釣りの偽体験談かどうかを判定しなきゃ」というスイッチが入ってしまうぐらい、細かい関係性や出来事が現実味があるように丁寧に考えられているのだ。

そして漫画の展開として現実味はありつつも、同時に現実的ではない偶然の幸運でストーリーが展開していく。ネットの「釣り師」の常套手段として、読者が興味を失わないように、定期的に劇的な出来事を盛り込んでいく手口があるのだが(それが却ってネットウォッチャーには不自然に見えて真贋判定に役立つことも多い)。海月姫は漫画であるという前提を忘れて読み進めてしまうほどに、次から次に「そうきたか!」という興味深い展開が展開される。そしてそれがウォッチャーの目からしてもまったく不自然さを感じさせない。

海月姫は漫画なのに、そして漫画らしいぶっ飛んだ展開があるのに、妙にリアリティが有る凄い作品である。

読んでいて「釣りの偽体験談かどうかを判定しなきゃ」というスイッチが入ってしまうぐらい、細かい関係性や出来事が現実味があるように丁寧に考えられているのだ。

そして漫画の展開として現実味はありつつも、同時に現実的ではない偶然の幸運でストーリーが展開していく。ネットの「釣り師」の常套手段として、読者が興味を失わないように、定期的に劇的な出来事を盛り込んでいく手口があるのだが(それが却ってネットウォッチャーには不自然に見えて真贋判定に役立つことも多い)。海月姫は漫画であるという前提を忘れて読み進めてしまうほどに、次から次に「そうきたか!」という興味深い展開が展開される。そしてそれがウォッチャーの目からしてもまったく不自然さを感じさせない。

海月姫は漫画なのに、そして漫画らしいぶっ飛んだ展開があるのに、妙にリアリティが有る凄い作品である。

おおつねまさふみ

趣味はネットウォッチと散歩。「観察対象は触っちゃだめ」という、古きよきネットウォッチ文化を今に伝えるベテランウォッチャー。「巧遅」よりも「拙速」を重んじているスタンスには根強いファンも多い。玄人好みのインフルエンサーとして珍重されている。

海月姫 1巻まるごと

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勝間和代 経済評論家・
中央大学ビジネススクール客員教授

「コテコテの料理をさっぱり仕上げて、
みんなをリピーターにする名人芸」

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いやぁ、王道すぎて、でも、目が離せなくて、すごいです、海月姫。さえないオタクたちが、力を合わせてブランドを立ち上げる、プロデューサーは政治家の愛人の女装息子、設定がベタすぎて、でも、それを隠さずに仕上げるのは東村アキコさんの才能です。細かいエピソードの一つ一つが、オタクおよびその候補の人たちの心をぎゅーーーーっと掴むんですよね。あるある、そうなの、でも、…

やまもといちろう 投資家、東京大学政策ビジョン研究
センター客員研究員

「吸い込まれてしまいそうです、
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人としての何かを捨てて、没頭できるものに集中できる環境って素晴らしい。たとえそれがオタクや腐女子の方面であったとしても、…

人としての何かを捨てて、没頭できるものに集中できる環境って素晴らしい。たとえそれがオタクや腐女子の方面であったとしても、何かに打ち込んでる人って美しいと思うんですよね。まずは一巻だけでも読んでみてください。眼鏡を外すと実は美少女、スタイル抜群の美女が実は美男子、訳ありの家庭、クールなようで惚れっぽい眼鏡男、ド定番中の定番を全部押さえながら、田舎から出てきた一人の少女が…

中野信子 脳科学者・医学博士・認知科学者

「敢えて言おう!私も尼~ずであったと!
(ギレン・ザビ風味で)」

「敢えて言おう!私も尼~ずで
あったと!(ギレン・ザビ風味で)」

通常、こういったコメントは中野先生モードで書くものだが、この作者の作品に関しては、中野先生の中の人としてのコメントが求められている気がしてならない。…

通常、こういったコメントは中野先生モードで書くものだが、この作者の作品に関しては、中野先生の中の人としてのコメントが求められている気がしてならない。どうもこんにちは、中の信子です。さて、海月姫は、腐女子かつクラゲオタクであり、クラゲを心から愛してやまない主人公・月海が、時の総理の義弟で代々政治家一族であり世襲議員のイケメン息子2人に激しく求愛されるという…

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海月姫
東京タラレバ娘

伊集院静、諫山創をはじめ 全96人の作家・漫画家の
「ふきぞめ」を公開 !あなたも新年の抱負を「ふきぞめ」に!!

ふきぞめ2015 その言葉から、物語がはじまる。 ふきぞめを書いてみよう!

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